★政治家や報道機関(国民もだが)が、日本の面している最大の2問題:①産業の構造病、②重大なる電力不足危機への認識不足も甚だしいとの嘆きをずっと書いてきた。
◆ ①の方は、食料など物価高騰に年収・手取りが見合わないということで、政治家は短期施策として、給付金や減税などを口走るが、先に書いた通り、物価の持続的高騰は、もっと持続する問題である可能性が高い。・・・日本国内では生産キャパ増への企業の投資が不足しているので需給ギャップ逆転している面あり。(植田日銀の問題意識。)あと、世界のサプライチェーンの構造的変節、更に食料は供給の大型化・集中化によるリスク集中問題もあると書いてきた。・・・つまり、ここ1-2年、なんとか、誤魔化せば、しのげる問題ではない可能性が高いのだ。だから、産業の構造病の改革で、成長投資・イノベーションの方向に産業を変えていかないと、就労者への付加価値労働配分は高まらない。
・・・10月9日に、皆の期待する洋上風力は大失速、一方で、本命の最新原発はまだまだハードルが高い話しを書いて、日本の電力が本当に心配である点を指摘した。
・・・政治家、報道機関が、なぜ、こんなに鈍感でいられるのか、と思うが、彼等の多くは、以下を理解せず、イデオロギー的に虚構の世界に生きているようにしか見えない。
【1】世界は、省エネ時代から、電力需要増大時代に、大変な勢いで変わっている:
・日本も5年前の第6次長期エネルギー計画では、省エネが大前提であったのだ。しかし、今年の2月に策定された第7次長期エネルギー計画では、特にAIのデータセンターや先端半導体の国内生産のために膨大な国内電力需要の伸びを想定しており、2040年には需要が、もう省エネではなく、今より1~2割増大する前提に変えているのだ。

・しかし、脱炭素の国際公約もあるので、増大する電力需要への供給の絵が苦しくて描けない。そこで、苦し紛れに「再生可能エネルギーと原子力の拡大」ということを口走っているのが日本政府の現状なのだ。
・・・そして、その中身を見るといよいよ問題なのだ。
(1)再生エネは、まだ無理やりに太陽光発電を伸ばすのと、これまでは洋上風力への悲願に賭けてきていた。・・・しかし、無理やりの太陽と風力への依存でのコストアップ、更には系統蓄電・統合などの出来上がり電力のコストの高騰問題にも触れざるを得ないので、計画の中での取り扱いに苦労しているのが現状だ。
・・・しかし、それでも看板では「再エネを40年度の電源構成の4~5割を担う主力」などとまで言っており、現実と看板との乖離がヒドイ。しかし、その点、まだ分かってない政治家も多い。
(2) 原発:
・「地元の同意を前提の再稼働の推進」と
・「廃炉を決定した原子力発電所を有する事業者の原子力発電所サイト内での、次世代革新炉への建て替え」を方針に明記した画期的計画になっている。
・・・つまり、経産省までは、漸くそうなのだが、政治家で構成されて内閣が、まだ本気になっていると思えないし、政党で、この点を強く打ち出しているのは、まだ国民民主党だけだ。
・・・更に、次世代革新炉は、日本の場合、関電が美浜に新設することで検討開始した三菱重工のSRZ―1200がそうだが、既存の軽水炉をベースにだが、それを新たに建てるなら、最初からこういう安全仕組にしようという、ありとあらゆる新企画を盛り込んだもの、そういうものとして検討するなら実際的であるが、それでも関電のそれの実現時期は、まだ全く見えない。
・・・更に政治家によっては、核融合で、などと、おとぎ話を語る人もいるから、まだまだ「次世代革新炉」での原発は、見えてきていない。
⇒ だから、はっきり言って、2040年の電力、1~2割供給増は、よほど変化が促進されないと無理である。実現のためには、隠しおいた石炭火力をバンバン稼働させ、原発の再稼働で地元同意を強引に突破するとかしないと、絶対無理。そして、太陽と風と言う虚構は、もう早めに終わりにしないと間に合わない。
【2】結果的に、日本で、2040年頃の電力不足が発生すると、どういう日本になるのか?
・勿論、自治体、企業、家庭、全部停電にもなり得るが、既存の電力需要に最優先供給し、停電回避を最優先するだろう。
・・・すると、何が起きるかというと、日本の産業での新規電力需要の計画が、棚上げになるのだ。
・新規の電力需要で、まずAI関係だが、根っこのベースAI事業は、今からでは、米国主導はもうどうしようもないだろう。
・しかしAIを活用した諸サービス(行政・交通・医療などなど)のための、応用型のAIのデータセンターは、構造的に国内設置になる。それまでも国外依存では、「データ主権」が脅かされる。
・・・だから、これから、先進各国とも、新時代、AI時代の社会に進化していけるように、その為の、必須の「要素」である「電力」確保を最優先国策にするのだ。
・・・WWIIの時代には、「油の確保」が「最優先確保の国策」であった。しかし、これからは「電力確保」がそれになるのだ。
・・・この核心的なテーマの認識が欠落している、のんきな政治家が多すぎる。特に立憲民主の時代錯誤はヒドイ。
・・・自民でもコバホークのように①太陽パネルは今後弊害も多く、中国に支配されるだけ、とか、②石炭も含めて脱炭素ではなく低炭素対応にしないと、日本の電力は不足する、と適切な発言をする議員は出てきているが、まだ、とんちんかん政治家が多すぎる。そして報道が同様だ。・・・日本、ホントに、電力不足で、AI社会になれない危機感がある。憂国憂国。
Nat
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