★国民負担率(税と社会保障費負担の国民所得中の割合)が昨年度47.5%の見込みで、マスコミも、また、騒ぐだけのコメンテーターも皆、「所得の半分を国に取られているのか!?」と反応している。
◆ しかしこの点、もう少し冷静に本質を見つめて置かないといけないだろう。
【1】 負担率の実際の推移は、2020年47.9%、2021年度に48.1%と過去最大だったのが、2022年度見込みが47.5%で微減。 ・・・ だから「所得の半分が」は前からなのだ。だから、2022年度の数字で初めて気が付いたように騒ぐのはオカシイ。騒ぐなら毎年騒いでほしい。
1996年と2022年見込(今回の見込み47.5%ではなく当初予算額の46.5%での比較だが)
・ 国民負担率 1996年 35.2% ⇒ 2022年46.5% +11.4%
税負担 22.9% 27.8% + 4.9%
社会保障負担 12.3% 18.7% + 6.4%
・と、社会保障負担(年金保険料・健保・介護保険料)の負担が増えているのだが、税負担の増加も専ら消費税増税で、それは、社会保障の国家負担分を埋めるためだ。だから、要するに、11%の負担増は、専らほぼ全部社会保障負担、つまり、高齢者の社会保障給付を就労者が重く負担する構造になっていることを意味する。
【3】そして、日本は少子高齢化が急だから、多国よりも社会保障負担が重くなっているのではないか?という問題意識になるだろう。
・・・最初のチャートの二番目のグラフを見てほしい。現時点で、負担率で日本は英国並み。ドイツの55%、スウェーデン・フランスは6割前後よりは低い。(米国は国家の公的健保が乏しく、国民が勝手にやれ主義の国だから、32%と日本より低い例外。)
・・・下の二つ目の大きなチャート。OECD36国の中でも、日本は上から25番目で、決して「大きな政府」の国ではない。欧州中心に、もっと高福祉・高負担の国があるのだ。
・・・ただし、最初のチャートの3つ目のグラフに戻るが、2006年⇒2018年の推移で見ると、国民負担率の「増加ペース」では日本の急増が顕著である。
◆◆ 要するに日本の問題は以下なのだ:
(1) 先進他国よりも、少子高齢化が進むペースが速く、国民の社会保障負担の、まず「金額」での増加の「ペース」で言って、他よりペースが早い。
(2) 一方、先進他国の中で、国民の収入が全く伸びないのが日本だ。三つ目の大きなチャートをご参照。その結果、収入・所得の中での、社会保障負担の「比率」での増加ペースが一層早く感じられるのだ。・・・結局、日本のゼロ成長も、この問題の大きな背景なのだ。
(3) しかし、欧州のような高福祉・高負担の国(例えば6割負担で国家丸抱えになっている北欧・フランスなど)とは構造が違う。
(4) だから、日本の問題は負担率が46~46%にまで上がってきていることではない。少子高齢化が止まらず、一方で、実質の国民収入がむしろ減ってきている。そのため、負担率の上昇が「止まらないこと」、「まだまだ上がること」―――そこにこそある。そこを騒いでもらいたいのだ。
◆◆ そしてその解決策は:
① 高齢者(特に比較的には窮乏してない高齢者)の自己負担を上げて、これ以上、就労者負担を上げないこと。(高齢者中心の日本の貯預金は2000兆円に積み上がっている。)
② 社会保障の構造、特に健保の振り向けられる医療そのものの構造的改革。
③ 就労者・納税者の激減を回避するため、外国人人材への日本の開放。
④ あと、一番難しいが、産業構造改革で企業の稼ぐ力を改善し、給与を上げること。
であろう。