♪♪ NATの独り言 (心・ジャズ)

生きていく上で信じてること。大好きなジャズのこと等

2024年01月

★的外れ・空疎な岸田演説の経済施策と、それの応援演説をする日経新聞

★ 岸田首相の施政方針演説 --- 全文が報道されているので、まず首相が「経済、経済、経済!」という「経済」につき、彼が何を言っているかを見てみよう。そしてコメント(⇒マーク)を記していこう。ダウンロード
【1】”物価高に負けない賃上げ”:
(1)まず政府自らが決めて進めやすい「公」分野の賃金の賃上げを言っている: 医療・福祉・公共サービス関係。⇒ つまり、この話から始めるということは、民間の賃上げを政府が “実現” することの難しさを分かっていることの裏返しと見れる。
(2)その上で、これも難しいと分かっているようで「中小企業やパート、非正規」の賃上げを課題として言っている。
・・・施策としては:
①「赤字企業にも効果のある賃上げ税制の拡大強化をしました」⇒ 税金払えてない赤字企業が多いのだが、減税効果を5年繰り延べ出来るようにした。しかし、まあ、そんなもんで賃上げする中小企業は極く限られている。
② 「(賃上げの価格)転嫁を後押しする公正取引委員会などの強力な指針も作りました。」
⇒はい、昨年11月に公取委は(強い立場の)発注者企業が納入業者の賃上げの価格転嫁を受け入れる経営姿勢・体制を敷くことを勧告する指針を出した。⇒ しかし、これも昨日ここで書いた通り、納入業者自身が過当競争で自ら値引き提案などをしてくるのだから、「指針」は上空を素通りしているだけだ。
③ あと個別各論で、イ)パートの年収の壁問題への取り組み、ロ)トラック運転手の適正賃金に係る法案を出すこと、ハ)建設労働者の賃金の目安化
・・・以上を書いた上で、「本丸は、物価高を上回る所得の実現です。あらゆる手を尽くし、今年、物価高を上回る所得を実現していきます、実現しなければなりません。」、そして「政労使の意見交換において、昨年を上回る賃上げを強く呼びかけ」と言って締めくくっている。
⇒⇒ 以上から分かるだろう。直ぐやれそうなことはちょっとやってきているし、更にやると言っているが、本質的に民間の自由主義経済活動の結果でしかない「賃金の決定」を、政府が誘導できる余地は限られるのだ。特に過当競争に明け暮れる中小企業、日本経済の太宗をなす中小企業の賃上げは、減税やら、指針やらでは全く何ともならない。昨日も書いている産業の根本的な再編・統合を先にしないと何もならない。今の中小企業に賃上げさせようとするのは、寝ている病人に小銭を与えて「走ってみろ!」というに等しい。
【2】”稼ぐ力の強化”:
⇒ 賃上げの話の後がこれ!! お~~~お!! ヒジョーに適切!!
・・・しかし、中身を聞き・読むと失望が激しい。非常に短く、中身がない。
「設備投資の拡大」として:
①「国内投資促進パッケージでは、水素や半導体など未来志向の戦略的投資を促進するための税額控除措置」
② 「中堅・中小企業の省力化投資の支援措置」
③ インフラで「震災復興、リニア新幹線、自動物流システム」。
を書いているだけだ。
⇒ 日本の中堅・中小企業の「稼ぐ力」が乏しい本質的背景は、設備投資が少ないことではなく、日本のムラ社会産業構造の中で、業者が異様に多数乱立、超過当競争しているからと、私は毎日書いている通りだ。経産省は前からこれを指摘しているが、中小企業オーナーの票に支えられる自民党には、その事実認識も、関連の施策追求は無理だ。野党にも難しいが。・・・上記の岸田演説のように、水素・半導体なんかに国費投入しても、大半の業界での中小企業の「稼ぐ力」は全く強化されない。
◆ 岸田演説の「経済」関係はそんなものだ。あと、GX(グリーン)とかイノベーションとか資産運用とかの項目はあるが、無意味なので、省略する。
・・・そして、日経朝刊が一面トップ記事で、岸田演説への応援記事を書いている。
・・・日経曰く『施政方針演説で「2024年に物価高を上回る所得を実現する」と公約した。春季労使交渉(春闘)での賃上げに加え、6月の所得税・住民税の定額減税による底上げに期待をかける。』・・・岸田政権は、①春闘での賃上げを後押ししつつ、②定額減税(例の4万円)で国民の所得を支えるだろう、という話だ。
・・・その上で、日経は「解説」として『23年春闘の賃上げ率は3.6%と30年ぶりの高水準だった。首相は政労使会議で「昨年を上回る水準の賃上げ」を求めてきた。演説で「これに呼応する動きが広がっている」と指摘した。』とまで応援演説をする。
もう何度も書いている通り、イ)春闘の「3.6%アップ」なんてものは概ね大企業の賃上げアドバール―ンの数字で、また、定昇・賞与アップなども含めた「水増し賃上げ」の数字でしかない、ロ)中小企業まで含めた全日本べースで、定昇・賞与アップ除外した厚労省発表の「月給ベースでのベア」では1.2%しかないし、ハ)更に、中小企業まで入れ、賞与等まで入れた総合では、逆に更に低く、もう0.2%とほぼ「横這い」(実質賃金の2~3%目減り)・・・これが実態であることは、例えば以下の拙文に詳述した通りだ:拙文
・・・しかし、日経は、実際の岸田演説の「口ほどにもない賃上げ・経済施策」に、健全な報道機関として切り込み批判するのではなく、上記のような春闘云々という「水増し宣伝メッセージ」でひたすらに岸田政権の応援を報道するのである。・・・今日も、私は非常に遺憾である。   Nat

★「賃上げのための価格転嫁を!!」などと言う人

★岸田首相の施政方針演説で、いつもの賃上げ問題に関連「そのためには、適正な価格転嫁を促す」とのこと。
・・・首相や政治家も、エコノミストも、皆、これを言う。「特に中小企業が、納入先に対して人件費アップを理由での価格転嫁が出来るようにすること、それで、広範な賃上げの実現が!」とおっしゃる。
・・・しかし、しかし、しかし、彼らの誰一人、価格転嫁を阻む要因の的確な指摘、そして、それの打破の方策を言わない、言えない。ダウンロード (10)
◆ 特に中小企業の納入先への価格転嫁が進まない本質的理由は何か?? 私の理解を書こう:
・・・何度も言う通り、超本質的には、日本の産業構造的に、同業の中小企業は超多数・乱立、そして、商品・サービスの差別性は乏しく、皆、同じようなことをやっていて、あとは、皆でライバル企業に対する相互の価格過当競争するしかない、悲しい悲しい構造だからだ。・・・そして、そこに儒教文化的な価値観、即ち「業者と顧客は対称構造ではなく、お客様は神さま、絶対だ!」という文化があるからだ。
・・・その結果、今般、認証不正問題を連発しているトヨタGのごとく、納入業者に永遠のコスト下げを強要することが当たり前みたいになっているのが、日本の産業なのだ。
【1】だから、中小業者は、とても「賃上げするので値上げお願いします。」とは言い出せない。
・・・中小企業庁は、2017年から「下請けGメン」調査をしてその辺の実態調査しているが、「休日労働の分の上乗せ労賃の価格転嫁の拒否」、「労務費、人件費を理由にした価格改定の要請は全て拒否されている」、「コストダウンの依頼があり、応えられないと『他で探すから』と言われる」・・・といった事例ばかりが浮かび上がっている。
【2】また、RENGO ONLINE記事によると、「中小企業庁が年2回、価格転嫁に関する調査をしているんですが、調査企業数約30万社のうち、回答企業数は1万7292社と、回答率がわずか1%台なのです。」とあり、調査に答えると、取引先からにらまれるという無言の圧力が蔓延しているから、回答率が低い、と考えられる・・とある。
【3】それが実態であろう。一昨年・昨年の物資高騰のほうは、納入業界が一律に影響受けた要因なので、納入先顧客企業も「已む無し」で価格転嫁受け入れた例が多いが、人件費・労賃は訳が違う。納入先からすると「アンタが勝手に賃上げする、そのしわ寄せをウチに持ってくるわけ? そんなこと言うなら、もういいです、よそから買いますわ。」と言われるだけなのである。
【4】それに対する対応策として、政治家やエコノミストは、 世の実情から掛け離れているので「納入企業からの価格転嫁の不当な拒否は優越的地位の濫用になる! 法的に規制すべきだ!」などとおっしゃる。
・・・アハハ。現実を知らんね。納入業者A社が納入先顧客企業に「従来の100円を、賃上げ分で110円にして下さいませんか?」と相談したら、何が起こるか? 納入業者B社がすかさず「ウチは100円でいいですよ。いや、ウチに替えてくれるなら、当分98円で結構です。」というのだ。納入先顧客が、そこでA社を切り、B社に切り替えるのは、優越的地位の濫用でも何でもない。自然な商行為である。そういうB社がいるのが日本なのだ。(勿論、納入先顧客が自分からB社に「A社の値上げ提案」のことを話し、対抗提案を意図的に引き出すといったことが背景にはあろう。しかし、対抗見積りを取るのは極めて自然な商行為である。濫用でも何でもない。)・・・コトの超本質は、110円でオファーする業者がいると、実は苦しいのに98円でビッドするライバル業者がいる、その過当競争構造、そこにあり。That is Japan ! なのだ。法令で「110円への値上げ提案がある時、たとえ98円の対抗提案があっても、110円の方を選び、社会全体のために貢献すべし」等というのはあり得ない。
◆ だから、岸田首相やエコノミストが「価格転嫁を促そう」と言うのは、悪い冗談でしかないのだ。岸田首相らがそういうのを聞く中小企業のオヤジは、「よう言うわ!?」「ウチらの厳しさも分からんで!!」の一言だろう。
⇒ 何度も言う、もう日本は、産業分野ごとの産業構造再編・集約、具体的には「横M&A」を国を挙げて進め、超過当競争状態を改善するしかないのだ。そのための思い切った税制(存続企業の法人税5年ゼロとか、売却した方のオーナ-の譲渡益課税全くなしとか)、商工中金・信金などの仲人への大きな仲介料の政府負担とか、色々やれる。具体策は私に聞いてくれ! いくらでも提案する。
・・・とにかく「価格転嫁を!」などと口走るだけの人はもうやめてほしい。  Nat

★日経への所感 ⑲ ― 日本のスタートアップ企業と大企業 のM&A問題

★今朝の日経朝刊が、ビジネス欄にだが、日本のスタートアップ・新興企業は まだまだIPO依存が多く、大企業にM&Aされていくケースが少ない、それを改善すべく、経団連が大企業の「新興企業の振興取り組み度合の点数表」を付ける運動を始めることを報道している。
<経団連の運動発表>経団連の運動
・・・その上で、日経は述べる: 「終身雇用と年功序列を続けながら正社員に頼る日本企業のやり方では、頻繁なM&Aで日常的に人材の出入りがある動的な組織はつくれない。日本のスタートアップが大きく成長する前に「小粒上場」するのも、大企業によるM&Aという「出口」の選択肢が封じられているからだ。日本経済の成長力向上には、スタートアップに対するM&Aを恒常化できるような大企業側の経営改革が欠かせない。」とコメントしている。
◆ 日経の記事は、その通りである。たまには正しいことを書く。
・・・そして上記の通り、新興企業M&Aが少ない背景が、日本企業の大企業の終身雇用を中心とするムラ社会的人事体系にあることを適切に指摘しているが、日本経済の改革の第一歩はそこにあり!とまでの踏み込みは、いつも通り未だ弱い。そこで私が書く。
◆ 日本の新興企業がIPOばかりで、大企業の関与は少ないし、そういうこともあり、日本の新興企業は小粒ばかり、新興企業取り込みによる日本の大企業の成長も乏しい、という「日本経済の停滞」との現実指摘は、実は経産省は前からしているのだ。
・・・添付のチャートは、2021年の経産省の日本の新興企業の問題点レポート: 経産省のレポート
 からの抜粋だ。
・最初のチャート: 日本では、大企業が自前開発主義なので、ちょっとした日本のハイテック新興企業が存在していても、M&Aで取り込む動きは鈍い。しょうがないから、新興企業側も小粒IPOを図るし、また、日本のIPOのハードルは低いので、小粒IPOされて、新興企業が何とか細々とやっていく現状がある。・・・これに対して、米国では、ほぼ全てのケースで既存企業にM&Aされるのだ。
・二番目のチャート: 上述の通り、日本はそもそも新興企業の事業が小粒。そして、米Facebookがまだ小粒であったInstagramを2013年に10億ドルで買収したような「戦略ビジョンからの大型買収」なんてのは、日本では滅多にない。
◆ 日本でそういうのがない背景だが、経産省レポートでも叙述しているが、私流に言うと以下だ:
(1)日本の特に大企業は、ムラ社会だから、ハイテック技術開発もムラの中で自前でやろうとする。・・・しかも、日本では「まともな人間は、大企業や官庁という立派なムラ」に属するという考えがあり、ベンチャー人間なんてのは「はみ出し者」視される。・・・「はみ出し者集団の取り組んでいる技術なんてのを取り入れるのは、ちゃんとしたムラの恥だ!!」といった意識すらある。
(2)よって、内部開発が本命で、内部開発は多少失敗しても「Niceトライ!」とされるが、よりにもよって、外部のはみ出し者集団の技術を取り込んで失敗でもしたら、ムラの内部でボロクソに言われる。言われた人のムラの中での出世は、そこで終わる。だから、誰もムラの外のものには手を出さないのだ。
(3)稀に外のものを買っても、日本の会計原則では、多大な暖簾(買収対価の純資産簿価を越えるプレミアム部分)を計上した上で、一定期間で償却していくから、当期の利益の足を引っ張る。それでは、ムラ全体の決算の足を引っ張る買収をした役員はムラの中で批判される。(アホくさ。)
(4)外の新興企業を買っても、そこにいる人材は、はみ出し者らだし、そもそもムラの構成員ではないので、人間扱いされない。だから、新興企業の中核技術者も離職していく。彼らを、買収先の大企業内で厚遇でもしようものなら、ムラの中の人事秩序が乱れ、ムラの中は怨嗟の声で混乱の極致になる。
・・・ここまで書いてきて、日本のムラ社会のひどさに、ちょっと気分が悪くなってきた。しかし、上に書いていることは大なり小なり、日本の大企業の実態なのだ。
・・・それを打破しないと何も始まらない。だから、前から、春の一斉新卒採用、定昇制、定年退職、退職金制、などの廃止から始めて日本の企業のムラ社会性を破壊、再創造しろ!!と主張してきている。それで初めて、企業の活発なM&Aが可能であり、意味が出てくる。「賃上げやM&Aをもっとやれ」ではなく、「日本企業のムラ性の創造的破壊を先にやれ」なのである。
・・・日経には、是非、そういう記事を書いてもらいたいものだ。  Nat

★追記: あと、米企業による米ベンチャーの買収は、実質それが「グローバル」世界での買収になる。
・・・しかし、日本の企業が日本のベンチャーを買収しても、それでは、全く、日本というガラパゴス世界の中での買収にしかならないのだ。
・・・日本の企業が、米国やらインドやらイスラエルとかのベンチャーで、いいところがあるのに出会っても、ベンチャー側で日本の変な企業に買われるのは拒否するだろう。「買うなら、全員離職する」とか言って。日本のベンチャーすら上手く買えない日本企業だ。世界のベンチャーなど買えるわけもない。あ~~あ、日本人、どこへ行く?? 〆


download  日経 振興企業買収_page-0001スタートアップ1_page-0001スタートアップ2_page-0001

★福島原発のデブリ取り出し方式での廃炉構想は、何時まで掲げ続けるのか?

★福島第一原発のデブリの採取方法の開発が難航しているという報道。(日経朝刊コピー添付。)
・・・廃炉のための難題である溶融核燃料デブリの取り出しと処理。そのための最初のステップが、兎に角、少量でも耳かきみたいに搔き取って採取してみて、性状などを調べることだ。ところが、その搔き出しのロボットアームの開発が難航して、いよいよ遅れるという話だ。
今までに私として何度も書いてきたが、3基合わせて880トンもあるデブリの多くの部分の搔き出しが、もしも本当に出来るとしても、どうなのか???ダウンロード (10)
(1)その化け物デブリ(人が近寄ると強烈放射線を浴び即死に近い死に方する)を放射線遮断して冷却しつつ一時保管するための大変な設備を、今、処理して放流している“汚染水”のタンクの撤去の跡地に建設する必要がある。
(2) 一方、もしデブリの大半を掻き出したとしても、結構大量のデブリは、原子炉の構造物にへばりついたまま残るから、今度は、まだデブリが絡みついて結構高放射線量の原子炉そのものを切り刻み解体する工事に移る。
(3)その結果、掻き出したデブリと、デブリのこびりついた構造物を解体した化け物の残骸みたいなものが大量に残るが、それを(1)で作る一時保管の設備で保管する。
(4)その後、究極的にその化け物を日本のどこに持っていって、どうするか?は、経産省の資料で、「その時に考える」になっている。
・・・以上から誰でも容易に分かる通り、(1)~(3)の異常にシンドイ作業を20年、30年かけてやったとしても、結局、行き場のない大量の化け物残骸が原発の横の、タンク跡の敷地の保管設備に貯められることになる。結局、今から100年後くらになっても、例えばプル239の半減期は2万4千年だし、強烈放射線は殆ど変わらないまま。だから、最終処分引き受け地は、どう考えてもあり得ず、永久に、福島原発の横で保管することになる。
・・・ならば、元から、デブリごと、原発丸ごと、石棺方式とかで封じ込めるほうが、よほど合理的なのだが、原発をキレイに片付け、元のキレイな更地の原っぱに戻すとの、地域へのお約束があるから、兎に角、今は取り出し、日本のどこかにもっていくという建前で進んでいくしかない、そういう政治的現実がある。
◆問題は、そのための費用だ。
1)今までに既にかかった福島原発事故後の賠償・除染・廃炉関係の諸費用だが、官民で作った組織である原子力損害賠償・廃炉等支援機構を通じての形になっているが、実質「国庫負担」(注:形式的には融資だが、東電は既に、これを債務計上しておらず、「利益」計上しており、実質「政府からの寄付」扱いになっている。)になっている費用が、2024年度中には、政府が取り敢えずの上限とした13.5兆円を突破するので、今般上限を15.4兆円に引き上げる。
2)経産省が廃炉完了までにかかるだろうと見込んでいる廃炉費用は、“取り敢えず”、8兆円と置いているが、何の意味もない金額数字だ。デブリのサンプル掻き出しすらママならぬ今、廃炉までの総額など誰にも見当もつかない。冗談ではなく、数十兆円規模になることもあり得よう。
・・・政府が、実質国庫負担の上限を、毎年、1~2兆円上げることを、20年、30年毎年繰り返していくと、2050年ごろの廃炉目標時期(達成非現実だが)ごろには、累積で数十兆円規模になっているだろう。しかし、毎年少しづつ増やすから国民の知らない間にそうなることになる。
・・・福島の住民への「更地返還」なる非現実なお約束(そして住民も内心無理っぽいと分かっているお約束)のために、じわじわと国民全体の負担を数十兆円規模に膨らましていく。そんな政治でいいのか?! デブリ掻き出しの模索を一通りやった頃でもいいので、国民に石棺方式(それでも大変な費用掛かる)へのシフトにつき、その是非を諮る局面があって然るべきであろう。   Nat

download 日経 福島デブリ_page-0001

★日経への所感 ⑱ ― 本当に「物価と賃上げの好循環」に向かっているのか?

★今朝の日経新聞は、以下コピーの通り、「物価越す賃上げ相次ぐ」と、相変わらず岸田政権の「物価と賃上げの好循環」看板の応援団記事を載せている。
・・・私が毎度書く通り、日経は、株価上昇でも賃上げでも岸田政権の応援団記事のバイアスがあると私は感じるし、そうなると勢い、私は「実際にはそうでない面もあり、実態はもっと厳しい」という方向でのコメントを書くことになる。
・今回の記事でも、日経は、賃上げがまだ大企業中心であり、中小企業が問題であることは書いているが、それでも中小もかなり賃上げしてきているように報道している。即ち、中小・中堅企業についての報道は以下だ: 『高水準の賃上げのカギを握るのは中小企業だ。商工組合中央金庫(商工中金)が23年12月までに実施した調査によると24年の中小のベースアップ(ベア)率は計画段階で2.58%だった。前年同時期の調査の1.98%を上回る状況だ。』
・・・そこで私が実際の商工中金の2023年12月の調査の中身を見ると、調査対象は商工中金の取引先中小・中堅企業で、アンケート依頼数 3,777社、有効回答数 2,230社、回答率 59.0%である。そのように回答したな企業では、定例給与・時給の増加率(注:定昇、賞与・一時金はちゃんと除外はしている)で、確かに23年度計画の平均1.92%、23年度実績平均2.58%、24年度計画平均2.92%となっている。・・・これだけ見ると、「なんだ! 中小企業も結構賃上げしているじゃないか?!」との印象を持たれれるだろう。
・・・しかし、後述の厚労省の、零細企業まで含めた調査では殆ど上がっていない。そして、商工中金の調査はバイアスがあるのだ。
・まず商工中金のバイアスだが、日本の中小企業360万社の中で、商工中金に取引をしてもらっている先は、比較的上位の7万6千社に過ぎない。そして、商工中金からの調査アンケートで「賃上げしてますか?」と聞かれて、いそいそと回答するのは賃上げ出来ている「いい子」組が中心になる。また、そもそもアンケ-ト依頼先3,777社が、回答をくれそうな大き目な企業である可能性も高かろう。だから、商工中金の調査は、中小企業の実態に比して、かなりの上方バイアスがあると思わざるを得ない。
◆ では、いよいよ厚労省の「毎月勤労統計」だが、23年11月の名目賃金(現金給与総額)は前年同期比で0.2%しか上昇していないのだ!・・・この点、23日の日経で一応報道していることはしているが、注釈として「調査対象は5人以上の事業所でパートタイム労働者や小規模企業が入るため、一般的な賃上げ率より低く出る。」等と書いている。・・・この注釈は全く適切でない。
⇒ 下に厚労省の最新の勤労統計(昨年11月時点での前年同期比)の重要部分を添付しよう。
(1)まず厚労省の勤労調査の基本的対象は勤労者5人以上の事業体だ。1~4人の零細事業にも、別途サンプル調査しているが、結果は(表の添付はしないが)、昨年7月の前年同期比で、5人以上の事業では一応1.3%上がっているのに対し、1~4人では0.4%。11月の5人~の0.2%増に対応する、1~4人の結果はまだ出てないが、11月の1~4人ではもしかして若干マイナスの可能性すらあろう。よって、1~4人まで入れた全体増では「超ミジメ」な実態、しかし、5人以上の事業だけで見ても収入増0.2%でしかなく、「ミジメ」な実態ということだ。
(2)次に収入(「現金給与総額」というが)の定義だが、ちゃんと、月給、賞与、時間外手当などを総合している。勤労者の本当の(税前・保険料など控除前だが)報酬総額だ。
・日経は「パートも入ってるから増加が小さめ」みたいに誤解を与える報道をしているが、以下の添付要点の通り、正規勤労者の収入増は0.3%に留まるのに対し、パートでは2.5%増となっており、人手不足でパートの報酬は増えているが、正規の報酬が増えにくいのだ。(注、全体平均すると、0.2%になるのは、計算の開示がないから推定だが、正規・パートのそれぞれ勤労者数、その比率や勤労時間数が、前年同期と異なることからの算術上の現象であろう。)
・また、下の内訳をみると、正規(一般労働者)でも月給では1.5%上がっているが、「特別に支払われた給与」(大半が賞与)では-12.8%と下がっており、見かけ上の月給を上げて、その分、賞与をカットされ、合計では横ばいになるようにされてしまっている悲しい実態が浮かび上がる。
・・・日経新聞は、厚労省の報告でも、そこまで見ていないで書いているのだ。
◆ 以上からすると、岸田政権や経団連やら連合、日経新聞などが、そろって、日本経済の最上層部で「物価と賃上げの好循環」なる歌を歌うのはいいが、零細・中小企業が大層をなす日本経済全体では、その歌は空虚なものにしか聞こえていまい。・・・日本経済は、賃上げを叫ぶ前に、まず構造改革(中小・中堅企業の新陳代謝)が先決問題なのである。 Nat

download  日経 賃上げ_page-0001厚労省勤労統計_page-0001 (1)
記事検索
月別アーカイブ
プロフィール

NAT

タグクラウド
QRコード
QRコード
  • ライブドアブログ