2014年11月
トヨタが11月18日に燃料電池車(FCV)の「ミライ」を発表。価格は700万円くらい。
マスコミも「夢の自動車」「水素社会の到来」とか騒いでいるが、私は前から今ひとつピンときていない。トヨタはハイブリッドに集中した分、電気自動車(EV)では大幅出遅れた。そのため、FCVに誘導したいとの思惑がある。ということから、トヨタの言う「究極のエコカー:水素FCV」を字句とおりに受けとめるわけにはいかない。
● 先ず大問題は、「水素は、燃やしても水になるだけで究極のクリーンエネルギー」とかいう点。確かにFCVの運転段階ではCO2も有毒エミッションも出さない。しかし、その前の段階で種々問題がある。
● まず水素は作らないといけない。最初からあるわけではない。
1.水素を石油・ガスから製造する場合:
水素を製造する有力手段は今の処、石油や天然ガスの分解だ。その段階で大量のCO2を放出する。
2.副産物の水素を使う場合: トヨタは「水素は国内の鉄鋼や化学の工場で副産物として大量発生する。その水素を使えば、産油国に支払うお金を水素インフラの整備・・に充てることが出来る」等というが違うだろう。確かに石油化学工場や鉄鋼のコークス炉からは、年間100億立米ほどの副生水素が出ている。恰も、今はそれを捨てているかのような言い方だが、現在、これらの副生水素は全て工場内のエネルギー源として自家消費されており、1立米も余ってない。それを無理に燃料自動車用に回すなら、その分、工場は外国から輸入する石油・ガス等を使うことになる。
3.太陽光発電等の電気で水を分解し水素を作る場合:
・まず太陽光発電は、既に有名になった通り、コストがバカ高いので、そればかりへの依存は出来ない。
・そうでない普通の電気から、水を分解して水素を作る? それならその電気は既存の送電網で電気ステーションなり家庭に普通に送られるのだから、それをEV(電気自動車)に供給すれば済む。わざわざ一旦、水素にする意味は乏しい。また、水の電解のエネルギー効率が70%位ゆえ、燃料電池の発電効率の50%と掛け算するとトータルでは35%とエネルギー効率が非常に低い。一方EVの場合、電気のまま送電してもEVに入るエネルギーのロスは殆どない。
●そして、水素は非常に爆発しやすい危険物質だ。また、分子が超小さいので、金属の分子に入り込み、水素脆性という、金属の強度を劣化させる現象を引き起こす。それゆえ、輸送し、貯蔵するのに種々対策が必要で、ガソリンスタンドに水素スタンドを設置するのに、追加で5億円掛かる。誰がお金を出すのか。また、そういう大仰な設備を製造し、輸送するための過程で、CO2が排出される。
勿論、EVにも課題はある。現状では、200Km分くらいしか充電できない。しかし、充電池の開発を急ぐほうが、上記の様々な水素問題を解決し、そして、異様に高価なFCV車のコストを下げるよりも、早いのではと思う。
トヨタの言うまま、そして、それをそのまま報道するマスコミに踊らされず、冷静にFCVとEVの行方を見極めるべきであろう。
Nat



