そもそも、ヒトはどうやって他の18種の直立歩行人類を圧倒したのか? 言うまでもなく、その高い脳の能力で生活の知恵を高め、高い言語能力でそれを家族・仲間・子孫にノウハウとして伝達することが出来たからだ。 知恵も、言葉によるノウハウも、生物としての身体的な獲得形質として遺伝で子孫に伝えられるのではなく、非遺伝的に、文化の世代間・部族間の継承として伝えられた。ここに重大なポイントがある。要するに、身体(ハードウェア)の工夫ではなく、文化(ソフトウェア)の工夫で勝負したということだ。
それまでは、ある生物が他の生物に対して意味のある差別性を開発したとしても、それは身体的ハードウェアの遺伝として子孫に継承されただけだ。例えばキリンが長い首を開発して高い木の葉っぱを独占的に食べるという新パターンを獲得したとして、それはハードウェアの遺伝として子孫に引き継がれたのである。という具合に、生物はそれぞれ、自分の得意なパターンの特別なハードウェアを開発し、その特別なハードが非常に合う環境で栄えたが、そのハードが合わない環境では、別の特徴的ハードをもった別種が栄えた訳だ。つまりハードの特徴別に、棲み分けをしてきたのだ。こうやって、カラスにしても、地域・環境により、43種のハードのバージョンが出来たのだ。ハードが違うと、違うハード間の交配は難しく、それぞれのハードが別の種になった。
ところが、ある新種のハードが1匹登場しても、それが子孫に広く拡がるのは非常に確率が低い。同じ新種のハードが同時に多数発生しないと、遺伝で多くの子孫を残せないからだ。だから、ハードの違いでの新種は、10万年に一つといったような悠長なペースでしか登場しない。また、ハードは不器用なもので、特定の環境でしか威力を発揮しない。ということで、生物というものは、非常に長い時間の間でも、それぞれの独自のハード種が余り変わりもせず、独自の地域・環境にこじんまりと棲息し棲み分けてきたのである。
ここに、ヒトという異様な生き物が登場する。ハード的には他の旧人類と殆ど同じ。チンパンジー等とも酷似している。しかし、ソフトが根本的に違う。知恵が高く、言語に優れていたので、地域・環境に適した生活パターンを、柔軟にソフトの新バージョンとして調整した。そして画期的なことに、その新しいソフトのバージョンは、言語で子どもや仲間に伝えればあっと言う間に拡がるのである。ハードの遺伝が意のままにならず、別のハードバージョンになるのに10万年くらいかかるのと大違いだ。
こうやって、ヒトは、アフリカから出発し、世界各地に拡散する中で、それぞれの新天地に最適なソフトのバージョンを調整して、それぞれの土地で最強の生き物になって行った。しかしソフトを載せるハードは1種類のままだった。ソフトが違っていても交配し合える同じハード、同じヒトという種だ。同じハードなのに、ソフトのバージョン調整で、世界中、様々な環境で最強の生き物に化けて行ったのである。 Nat
ヒトに一番近いチンパンジーでも4種類いるらしい。ゴリラは5種。カラスは43種。ネズミは730種だ。地球上の棲む地域、地域の中でも棲む形態などで、少しづつ違う種が多く存在するのが動物・生物の基本である。ヒトは、この基本に反して、地球上に66億匹もいるのに、全て1種類という異常な存在だ。
まず、人類は、ずっと1種類であったかというと、通説では直立歩行の人類が誕生して以来、19種くらいの種が登場するが、それが結局ヒト以外は絶滅し、最後にヒトだけが残ったことになっている。有名なネアンデールタール人は、ヒトよりも先にアフリカからヨーロッパに進出し寒冷適応もして繁栄するが、多分言葉の能力が発達せず、ヒト(クロマニオン人)に駆逐されたことになっている。(その辺の話しは2007/4/15の当Blog記事に書いた通り。) またアジアでは、ジャワ原人が4万年くらい前まではヒトと共存していたらしいが、ついに脳の劣るジャワ原人は滅んだという。本当に彼らは絶滅したのか、それとも少しはヒトと混血して残ったのか、良く分からない。しかし、少なくとも、ある地方に行くと今でもネアンデールタール人が何万人も住んでいるというようなことはないので、やはり、ネアンデールタール人を含めて残りの18種は、何故かいなくなったと思われる。
その後、暗い中世を経て16世紀、解き放たれ、科学と合理主義を得た人類は、科学を駆使し、航海技術を駆使し、世界中に増殖していった。怖いものなしの、人間賛歌の時代だ。
「その3」に書いた通り、人類は、もう限界に来ている。ここからは、深刻な食料と飲み水の不足が地球を襲う。先進国にも、値上がりという形で既に影響が出始めている。食料の大量輸入国の日本は特にやばい。
私は前に人間の進化の項で書いたことがある(2007年4月24日記事)。人類の未来につき、ひとつ希望を持つことがあるのだ。科学が、心霊などに関する超科学も含めて今より格段に進歩し、更に人類が意識面を大きく進化させる中で、将来の人類は今の人類より霊的なもの、神的なものに、より具体的に踏み込み近づく存在になるのではないかということだ。全て人為的技術に囲まれながら、神や霊とより親しく意識交流する人類。もしかして、200年後くらいの人類はこうなっているかもしれない。(本項了) Nat 
もう一つは医学の進歩。その昔、子どもは直ぐ死んだ。だから多産ながら少数生き残ったのが大人になった。しかし、医学の進歩で多産の子はそのまま大人になった。
16世紀は、欧州の人類が暗い中世から脱却した時代だ。ガリレオやダヴィンチなどの科学者が活動し、世界の中心だった欧州がルネッサンスに沸き、自由な経済活動が活発化する。更に、大航海時代で、欧州からアフリカ、アメリカ大陸に進出が始まる。要するに、欧州から始め、人々が明るく裕福になり、新天地に拡散する時代になったのだ。この結果、少なくとも欧州人は大いに活性化した。それで、人類はどんどん子どもを産み、前よりも裕福になった富で子どもを育てた。こうやって、突然、100年ごとに30%増えるという人口爆発が始まる。中国や日本などのアジアでは、人口爆発は18世紀を待つ必要があるが、欧州では、200年早く、それが始まったのである。
Nat